せんじろう

数学徒です

東工大(東京科学大)数学系・東大数理 院試体験記(2/2)

東工大数学系・東大数理 院試体験記(2/2)

 

はじめに

この記事は以下の記事の続きです。

senjirosenjiro.hatenablog.com

 

東工大院試 中日

この日は東工大院試の筆記試験8/16と口述試験8/18の間、8/17です。この日も院試対策会があり、他分野の人々も含めて問題の解き直しを行いました。自分はやはり大きなミスをしていないなということが分かってニッコリしました。また、きれいに解けた線形代数の問題を他の友人たちにも教えたところかなり褒められたため、イェーイと思いました。
口述試験ではどうやら「試験の出来はどうだったか」、「将来どんなことをやりたいのか」などが聞かれるらしいという情報をキャッチしていました。そのため、①試験の解き直し②将来やりたいことを事前にまとめておく、の二つをやりました。YouTubeで指導教員の名前を検索すると研究内容を1時間くらい喋っている最近の動画が出てきたのでそれを見ていました。ちなみに全然分かりませんでしたがなんとなくキーワード的なものを知れました。例えば、「オフチョベットしたテフをマフガットにしてリットにする」みたいな文ってオフチョベットもテフも分からず何言ってるか分からないじゃないですか。でも、「テフに対してはオフチョベットという操作を行うことができる」「テフにいろいろすることで、最終的にリットになる」みたいなことは分かるわけですよね。そういう感じです。
この日の夕方に筆記試験合格者の発表がありました。一緒に頑張ってきた友人のうち何人かが落ちてしまい、ひええええと思いました。特に東工大内部の人で解析専攻は9人いたのですが、面接に進めたのは4人です。中には学部卒で就活する人もいますが、仲間が減ってしまい悲しいです。解析学では全部で8人面接に進めたそうなので、4人が東工大生ではないということですね。後日代数学の友人に聞いてみると東大生が多かったらしく、さすがは東大生という感じです。

 

東工大院試 口述試験

どうやら東工大内部の人で確実に受かっている人は5分とか10分くらいで終わるらしく、私にもその「確定演出」が来ないかなあと思いつつ面接に臨みました。結局3分くらいで終わったので、私はもう受かったと信じていますが、合格発表はまだです。(追記:合格していました。)

 

東工大院試後~東大院試前

東大の過去問の復習をしていました。そんなに特筆すべきことはなく、普通に勉強しました。

前々日に駒場キャンパスの下見をして、近場のコンビニや数理への近道などを見つけました。

 

東大数理1日目

23:00就寝、6:00起床という完璧な睡眠を決め、めちゃくちゃ元気な状態で試験に臨みました。

 

東大数理 英語

英語は80分で文章題を2つやったような気がします。どうやら噂によるとあんまり重要ではないらしいです。噂の真偽は不明です。

 

東大数理 A問題

まずざっと見てみると、[1]が微分積分の問題で、(1)はすぐ解けましたが(2)がよく分かりません。とりあえず飛ばして[2]へ。
[2]は線形代数の問題で、途中まで問題文を勘違いしていたり、計算していたら何かの三乗根が出てきたりしてウッと思うなどし、時間をロスしました。計算ミスが無いか非常に心配ですが最後の問題以外解答を書きました。
ここまで0完でちょっとヤバいかも思いながら、ざっと選択問題を見てみます。 [3]の微分積分はなんとか解けそうですが面倒くさそうです。(実際はそんなに面倒くさくなかった。)[4]は線形代数ですがなんか字面がいかついのでやりたくないです。[5]の位相空間論はほんのちょっといじったところよく分かりません。[6]の複素解析ポアソン核を用いて円盤上のディリクレ問題を解く話なので面倒くさそうなものの解けそうです。[7]の微分方程式は何か解けそうな感じがプンプンします。
[7]から解き始めましたが、かなり計算が大変だったものの解けました。(1)で微分方程式を変換し、(2)で解かせるという問題です。(1)をやりますがあんまり解けそうな形になっておらずがっかりしました。ところが気づいちゃったんですが両辺に■■(ネタバレ回避)を掛けて■■すると■■法が使える形になっていそうだなと思い、3,40分格闘して完答しました。
次にちょっとだけ手を付けていた[3]を見てみます。(1)は簡単で(2)が問題です。しばらく考えていると気付いたので完答しました。既存の何かの議論に押し込めようとしていた私が悪かったです。

この調子で[2]に戻ってみます。やっぱり何度計算しても三乗根が出てきてしまいあまりきれいな値になりません。どっか間違えてんのかなあと思いつつ、どっか間違えてそうな答案を作成しました。

最後に[1](2)を見てみます。広義積分が絶対収束しないので扱いづらく、どうしたものかと悩みました。上手くいかなそうなことをゴチャゴチャやっているなかで■■をするとするっと欲しい項を取り出せることに気付き、一気に解答を書き上げました。計算ミスが無いか見直して見ると7カ所くらいミスっており慌てて修正します。この時点であと15分くらいしか時間が無かったので、ざっと解答の見直しなどをやってフィニッシュです。

試験の前半は0完の状態が続き、苦しい戦いをしましたが諦めなくて良かったです。結局4完することができましたが、どっかで計算ミスをしていても全然おかしくはない、そんな出来です。この後友人たちとA問題の話をしながら歩いていたのですが、今のところ私にミスは見つかっていません。しかし、どっかミスしてそうだなと不安で一杯です。

 

東大数理 2日目

3時間弱しか睡眠を取ることができず、あんまり頭が回りませんでした。数学において寝不足は敵です。自分のコンディションを整えることができず反省しています。

東大数理 B問題

結論から言うと1.5完しかできず、めちゃくちゃ失敗しました。反省点がめちゃくちゃいっぱいあります。

試験開始とともに問題用紙をざっと見てみます。私が手を付けられそうなのはルベーグ積分関数解析微分方程式、数値解析の4問だなと目星を付けました。最終的に選択したのはルベーグ積分関数解析、数値解析です。
まずルベーグ積分を考えてみたところ、10分くらいで解ける方針が立ったので小躍りしながら解答を作成しました。これで1完できたぜ!と思ったのですが、試験後間違いに気づきかなり悔しいです。
次に関数解析を見てみました。累計で2時間以上考えたのですが結局ほぼ何も分かりませんでした。(1)~(3)までありますが(2)しか分かりません。これじゃなくて微分方程式の問題を選択すればよかったなあと後悔しています。
微分方程式の問題は周期境界条件を付けたKdV方程式の問題です。○○が保存量になることを示せ、みたいな問題で、何回も部分積分する必要があります。後で楕円型PDEの友人に解き方を教わることができ、勉強になりました。

数値解析の問題は、とある偏微分方程式をコンピュータで解く方法の一つを題材にしたものです。添え字や数式がごちゃごちゃしますが、高校数学を使って1時間ちょっとネチネチ式変形することで完答しました。計算ミスが非常に怖いですが、今となっては祈るしかありません。

こんな感じでB問題は全く上手くいきませんでした。

 

東大数理 3日目

B問題の日とこの日の間には1日だけ中日があります。私は口述試験に向けてセミナーの復習をやっていました。ちなみにこの日の夕方に筆記試験通過者の発表があるのですが、145人受けたのに対して61人が通過したようです。私の周りではほとんどの人が通過しており、みんな優秀だなあと思います。
さて口述試験の内容なのですが、口外するなと言われているので言えません。募集要項によると「専門科目についての一般的質問」とあるのですが、それをされました。時間は1時間くらいです。大学の授業とセミナーの復習をしっかりやっておくのを強くおすすめします。また、普段から自主ゼミをすることで、人前で緊張しながら数学をやってても頭が真っ白にならないようにしましょう。さらに詳しいことを聞きたい人は、まず僕と仲良くなってください。

 

院試の感想

1. きつかった

私の場合は、院試で失敗するわけにはいきませんでした。もしどこにも受からなかった場合、①来年度から頂いてる全ての奨学金がストップし、②大学の寮から追い出され、③無職になってしまいます。これは死んでも避けなければいけません。

ところが数学の試験では運の要素が非常に強いです。如何に勉強しようとも、結局は試験問題の解き方を時間内に思いつく必要があります。思いついた「それ」が上手くいくかどうかはやってみないと分かりません。上手くいかなかった場合、何か別のアイデアを試す必要があります。1時間くらい何も進捗がない中で、多分上手くいかないんだろうなあというアイデアを繰り出し続けて、試験終了までに当たりを引かなければいけないというのがかなりきつかったです。特に「時間制限が数時間しかない」というのがギャンブル性を高めており、なかなかハードでした。

2. 楽しかった

前述したギャンブル性なのですが、辛いことには辛いものの、謎のヒリヒリ感があります。もちろん院試なんてもうやりたくありませんが、このヒリつく感じはマイナスかプラスでいうとプラスな気持ちです。

もう一つ楽しかった点は院試対策会です。私の代は同期で協力しようという気風が強く、情報交換や議論が活発に行われており、熱気を感じ、元気をもらいました。何人もの人と一緒に合格という一つの目標に向かって頑張る感じを味わうことができました。ディスコードの院試対策サーバーには、弊学数学系27人の内20人が参加しており、非常に大きかったのではないかと思います。メリットしかないので、皆さんも友人と協力しましょう。

3. 体調やメンタルの管理について考える良い機会になった

数学の試験は出たとこ勝負で機転を利かせるような部分がどうしても大きくなってしまいます。つまり体調とメンタルが大事ということです。今回の院試では、種々のストレスを感じつつも頭を動かし続けることができました。これはあくまで私のやり方になってしまうのですが、

  • ジムで30分走るとストレス解消になる上、ぐっすり眠れる。
  • 変に身体に良い食事をしようとすると逆にお腹が痛くなるので、食生活は普段通りの方がよい
  • 友人、恋人など人と話すことでストレス解消になる。ついでに数学の議論もしておけば一石二鳥である。
  • 何かいつもやっている習慣に固執することで、それをすることで一息つける(私の場合は15ヶ月位前から朝にコーヒーを飲み続けているのですが、これが良かった)
  • カフェインは摂り過ぎても良いこと無い

などの知見を得ることができました。特に何か有酸素運動をするのはおすすめです。

 

おわりに

ここまで読んでいただきどうもありがとうございました。各方面にありがとうと言おうと思いましたが、色々とこれからが勝負なので、これからも頑張ります。

 

院試対策会の同期の院試体験記(随時追加します)